漫画家に憧れる少年が気にするのは「どうすれば上手に描けるようになるか」。
漫画家からのアドバイスは決まって「漫画を上手に描こうとするより、外に出ていろんな体験を」。
プロの漫画家や小説家など、何かを創造する人はよく「作者の経験値を上げることが良い作品に繋がる」と言います。
言わんとしていることはわかります。
作者自身が面白くないと、生み出される作品も面白くないのです。
リアリティがないというんですかね。
船に乗ったことがない人が、漫画の中で船のシーンを描いたとしても、どこか嘘っぽいのです。
例えば恋愛をしたことがない中学生が想像でキャラクターの心理を描くとします。
A君がBさんに振られた。
そのときのA君の気持ちを「悔しい」とか「悲しい」と表現するでしょう。
もちろんそれも間違ってはいません。
でも高校生、大学生、社会人と経験を積むと「振られたときの感情は悔しいとか悲しいだけではないんだな」ということに気づきます。
例えば「安堵する」なんてこともあるのです。
「振られて安堵する気持ち」を恋愛をしたことのない中学生が想像するでしょうか。
たぶん、難しいでしょう。
中学生にとっては「振られること=よくないこと」という方程式しかないんじゃないかと思います。
もし「振られて安堵するA君」を描かれていたら「この作者は経験値が高い」と感じます。
とはいえ、漫画家は経験では絶対に補えないシーンを描くこともあります。
例えば空を飛ぶシーンや、死ぬシーンなど。
実体験ではできません。
それでもリアリティがあると感じるのは、作者自身のそれらに近い経験を組み合わせているからでしょう。
面白い漫画や小説をかくには、作者自身がいろんな経験を積むことが一番というプロの意見も納得です。
なぜこんな話をしたのかというと、この「経験」が「英語のリスニング」に活きるという話を聞いたからです。
日本人は、外国人のカタコトの日本語もしっかり聞き取れます。
その理由はずばり「何を言いたいか予測しているから」です。
外国人が「スミマセーン、ワタシ、オナカナイ、500円アル、ワタシタベル、シタイ」と言ったとして、聞いたあなたは「お腹が空いたから500円で何かを食べたいのね」と理解できるでしょう。
こんなふうに、聞き手も相手の言うことを推測しながら聞いているので、ちゃんと聞き取れます。
ということでリスニングも
「英語の音を聞き取れる」だけではなく「聞き取った文章の意味がわかる」という2段階目が必要なのだそう。
いくら英語の音を聞き取っても、その単語の意味がわからなかったら、リスニングができていないということになります。
むしろ大切なのは英語の音を正しく聞き取ることではなく、相手が言った文章の意味がわかること。
極論を言えば「相手の主張を理解できるのなら、言葉は聞き取れなくても良い」ということになります。
ただ、そうは言っても入試のリスニングで「リスニングできなくても相手の主張がわかればいいと思います!」なんて言ったところで、リスニング部分は0点になってしまいます。

そりゃそうだ
ということで、ちゃんとリスニングの話をします。
先程の例で、カタコトの日本語を話す外国人の主張を理解できたのはなぜでしょう。
それは「経験をたくさん積んでいるから」です。
日本人は日本語を浴びるほど聞いているので、経験は豊富です。
だから日本語で話してくれれば、カタコトであっても主張を理解できるのです。
自分の中にない言葉は日本語であっても聞き取れません。
聞き取れても意味は理解できません。
例えば不意に「彼はソクサイですか?」と聞かれて、ぱっと「はい、いつも孫と遊んでますよ」なんて言える人はあまりいないでしょう。
中学生なら「え…?ソクサイ…?嘘くさい??彼は胡散臭いってこと?」みたいに、自分の知っている単語に置き換えて受け取ってしまうでしょう。



ソクサイって何よ



漢字で書くと息災



息災って何よ



よく神社で「無病息災」を祈願するなんて聞かない?



佐野厄除け大師!
結局は、その言葉が自分の中に染み付いているかどうかです。
日本語だって自分が知っている言葉であればきちんと聞き取れるし、意味も理解できます。
でも「息災」とか「穀雨」とか、自分の中にない言葉は聞き取れないか、聞き取れても意味が分からず話が噛み合わないと思います。



こくう?ドラゴンボール?



それは悟空
穀雨というのは一年を二十四に分けたときの言い方の一つです。
有名なのは「立春」とか「夏至」ですね。
こういうのは「りっしゅん」「げし」とちゃんと読めるし、一年のうちのいつ頃かもわかると思います。
穀雨というは4月20日頃のことです。
一年を4つの季節に分ければ春夏秋冬。
それをさらに6つずつ分ければ二十四節気。
例えば春は「立春」「雨水」「啓蟄」「春分」「清明」「穀雨」に分かれます。



春分って、春分の日の春分?



そう



それ以外のやつ、読めないんだけど



自分で調べなさい
ということで、英語のリスニング対策として「ひたすら英語を聞く」というのはあまりおすすめではない勉強法らしいです。
英語のリズムみたいなのはわかっても、単語を知らなけりゃ文の意味もわからないので、リスニングで英文の意味を理解することなんて無理なのです。
うちの娘が3歳頃、枕草子や平家物語の暗唱をしていました。
「ぎおんしょーじゃのかねのこえ、しょぎょーむじょーのひびきあり」
子供は聞いた音をそのまま真似て発音することはできます。
リスニングもスピーキングもできているということです。
とはいえ、じゃあ「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」ってどういう意味かと聞かれたら、さっぱりわからないと答えるでしょう。
3歳児がわかるのは「かね」「こえ」「ひびき」くらいでしょうか。
一文の意味を知るには、日本語の言葉をもっと知らなくてはいけません。
英語のリスニングを勉強する意味は「英語で発音された文章の意味を理解する」のが重要なはず。
ただただ「なんていう音だったか」が聞き取れたところで、その意味を知らなければ理解できません。
「improveっていう単語が聞こえた!」
「じゃ、その意味は何?」
「それはわかりません」
こんなのだったら、リスニングができているとは言えません。
得点は0です。
ということで、リスニング力を鍛えるなら「いろんな経験をして、いろんな言葉を知る」というのが近道のようです。
「今はどんな場面で、相手が何を言うかを推測する」というのが聞き取るための大事なこと。
日本語でだって突拍子もないことを言われたら「え?」って聞き返してしまいますよね。
普段、会話するときは気づかぬ間に推測しているものです。
それに気づけたら、英語にも応用させましょう。
という受け売りでした。



君は受け売りの知識をさも自分の知識のように語るのが得意だね
私も頑張ってリスニング力を高めたいと思います。