諱というものをご存知でしょうか。
忌み名とも書いたりするので、何やら恐ろしい雰囲気を醸し出す言葉ですね。
この諱、実は本名のことです。
昔は人前で本名を言うことは避けられていたようです。
なぜなら「自分の本名を知られるということは、自分の全てを知られてしまう」という考えだったからです。
本名を霊的にも大事にしていたようです。
ただ、気持ちはなんとなくわかります。
例えば自分は相手の名前を知らないのに、相手に名前を知られていると少し怖いですよね。
住所なんかもそうです。
初めて合った人に「あなたは◯◯に住んでいるんですよね?」なんて言われたら恐怖です。
個人情報保護法ができた現在、昔の「諱(本名)を人前で言わない」という感覚がわかってきた気がします。
そういえば最近は、小学生も登下校中は名札を外すなんてことを聞いたことがあります。
その名札を見られて「◯◯君、お母さんが倒れて病院に行ってしまったから、おじさんが◯◯君を連れて来てほしいと頼まれたんだ」なんて言われたら、子供はそのおじさんについていってしまうでしょう。
自分の名前を知っている=知り合いの人、というイメージを悪用した例です。
昔の女性は結婚相手にしか諱を教えなかったそうですが、今よりも個人情報保護がしっかりしていたのですね。
武士が活躍する時代は名前も長かったようです。
私達が知る「織田信長」も実は「織田三郎平朝臣信長」というそうです。
名字 | 織田 |
通称 | 三郎 |
氏 | 平 |
姓 | 朝臣 |
諱 | 信長 |
ちなみに「徳川家康」は「徳川次郎三郎源朝臣家康」ですって。
名字 | 徳川 |
通称 | 次郎三郎 |
氏 | 源 |
姓 | 朝臣 |
諱 | 家康 |
氏は源なんですね。
氏名という場合は「源家康」となります。
実は足利義満も氏は源です。
氏名という場合は「源義満」なんですね。
じゃあ「足利」ってなんなん?なんで足利義満っていうん?
足利は名字であり、足利という地名に由来しています。
当時は武士の全盛期。
日本中は「平」と「源」だらけでした。
そこで氏が平か源だけだと、多くの人とかぶってしまって意味をなさなくなってしまったのです。
現代でも、同じ名字の親戚の家に電話するとき「茨城の清水ですけど」みたいに言いますよね?
皆が同じ名字の場合、地名で呼んだりしているはずです。
たしかに
で、この「平」や「源」は信長や家康にも受け継がれていますね。
キラキラネームと言われる名前が流行っている昨今ですが、名前というのはいつの時代も読めませんよね。
田沼意次……これを「おきつぐ」と初見で読める人なんていないでしょう。
徳川慶喜……「よしのぶ?どのへんが?」ってなってしまいますよね。
そんな昔まで遡らなくても、祖父の時代あたりでもすでに読めない名前の人はいっぱいいたと思います。
第79第総理大臣の細川護熙だって、その時代に生きていなければ読み方なんて知りませんよね……。
ただ、いずれの時代も名前というものは大切にしていたんだなということはわかります。
人から名前を奪うということは、もっとも酷い仕打ちであると言えるでしょう。
千と千尋の神隠しの湯婆婆の行動も納得できますね。
あの作品は「名前」というものに込めら得れた霊的な何かを表現しているのでしょう。
名前の面白さも、歴史を勉強すると再発見できます。
勉強って面白いですね。