国語の文法の解説をする機会が増えました。
日常で使う日本語は大きな文法にはのっとっているものの、中学で勉強するような文法にはのっとっていないように感じます。
例えば「私は朝ご飯を食べます。」なんて英語の例文に使われるような日本語って普段は使いませんよね。
「朝ご飯食べるよ。」くらいの表現が多いんじゃないかと思います。
あとは省略とかもそうですね。
「あんま、なくね?」なんていうセリフも、文法を説明しようとするといろいろと面倒です。
古文で出てくる「ん」もそうですね。
「行かん」と書いてあったら「行かない」という意味になります。
関西弁とかそんな感じ
でも「いざ、行かん」と書いてあったらそれは「行こう!」という意味になります。
なんでよ
この辺、難しいよね
文法的には「行く」に意思を表す助動詞の「む(ん)」がくっついて「行こう」です。
「行く」に打ち消しの助動詞「ぬ(ん)」がくっついたら「行かない」です。
でもどちらも「行かん」とも書きます。
全く逆の意味なのに……
「私が行かん」だったら「私が行こう」っていう感じがしますね。
「私は行かん」だったら「私は行かない」っていう感じがしますね。
でも、他の人が行かないと言っている場面で「私は行かん」と言ったら「私は行く」という意味になりそうですね。
難しすぎ
活用の種類で、未然、連用、終始、連体、仮定、命令の中から選ぶときの話。
「走らない」「走ります」「走る。」「走るとき」「走れば」「走ろう」と言えば「五段活用」だとわかります。
でも実際には「走って」なんていう表現がたくさん使われます。
じゃあ、それは何形?という問題が出るのですね。
活用形にないから、不明系
そんなのないし
ちなみにこれは「走る」という動詞に助詞の「て」がついたのです。
以下の中から一番自然に聞こえるのはどれですか?
1未然形「走らて」
2連用形「走りて」
3終止形「走るて」
4連体形「走れて」
5仮定形「走れて」
6命令形「走れて」
3終止形「走るて」は関西弁にありそう。6命令形「走れて」も
まあ、そうなっちゃうよね~~
答えは2連用形の「走りて」です。
「走って」のちっちゃい「つ」はどこから来たのさ
走りの「り」が「っ」に変わったのです。
小さい「つ」になるのを促音便といいます。
こんなふうに、音がかわってしまう「音便」というのが結構あります。
例えば「書きて」が「書いて」になるイ音便。
「歩きて」が「歩いて」になったり、日常ではよく見る形ですね。
「嘆いて」「吐いて」…結構あるな
なぜマイナスな例ばかり
先程の促音便は「行きて」が「行って」、「立ちて」が「立って」、「殴りて」が「殴って」など、こちらもたくさん。
さらに「ん」になる撥音便は「読みて」が「読んで」、「飛びて」が「飛んで」、「はさむて」が「はさんで」となり、助詞の「て」も「で」に変わってしまいます。
他にも「ウ音便」もある
すべては「発音に便利だから」つまりは「発音しやすいから」こう変化したのだと思われます。
この音便ですが、説明するときに「一番自然に聞こえるのはどれ」と問いかけ、皆が連用形の「呼びて」「飛びて」を答えてくれればいいのですが、どれもピンと来なかったりする子が結構います。
そりゃ日常で使わないもんね
この辺がピンと来るのって、どうやったらいいんでしょうね。
ちなみに茨城統一テストの古文で「いとやむごとなけれ。」という表現がありました。
「いと」「やむごとなし」この辺の言葉を知っているか……。
ちなみに「いと」は、卒業式に定番の仰げば尊しででてきますね。
「思えばいと疾し、この年月」
漢字を見ればわかるように、疾風の疾ですね。早そうでしょう。
つまりこれは「思い返してみれば、とても早かったな。この年月は」ということ。
え、「愛おしい」みたいな意味かと思ってた
そしたら「思~えば~、いと~しい~」でしょ
たしかに「いととし」とは言わないか。てか歌詞の意味なんて気にしてなかった
この歌詞にでてくるように「いと」は「とても」という意味です。
でも、残念ながら「仰げば尊し」は伝わりません。
9年生、全員がこの歌を知らないと言ってました。
蛍の光なら、閉店間際に流れるから聞いたことはありそう。
「やむごとなし」も、宮崎駿監督の「もののけ姫」の中で、ジコ坊が「やんごとなき方々や、師匠連の考えはわたしには判らん。判らんほうがいい」と言っています。
どういう意味?
「やんごとなき方々」は「高貴な方々」のことで偉い人、つまり朝廷や貴族を指しています。
「下っ端の私は、ボスの考えは判らないし、判らないほうがいい」と言っているのですね。
なんで判らないほうがいいんだろう
下手にいろいろ知ってしまうと「秘密を知る者」として消されちゃうと思ってるんじゃないかな
ただの駒は、余計なことを知らなくて良いってことか
こんなふうに、少しでも日常の中に「いと」や「やんごとなし」が出てくれば、こういう話をしてもピンと来るのですが、これば全くゼロの子に興味を持たせたり理解させたりするのは難しいですね。
麻雀に興味が全くない私が「パイの名前」とか、技みたいな名前を教えられても全く頭に入ってきませんからね。
興味は人それぞれなので、この辺は仕方ないのかもしれませんね。
ただ、学校で習う歌の影響ってものすごく大きいと思うので、「仰げば尊し」はどこかで習ってほしいなぁと思う今日このごろでした。