日本の政治評論家、作家、実業家である竹田恒泰さんの「中学 歴史」。
これは未来の中学生の「日本人による日本人のための歴史教科書」です。
現在はまだ教科書として使われていません。
文部科学省検定で不合格だからです。
教科書審議会からたくさんのダメ出しをされたわけですが、どの部分がどんな理由で駄目なのかまで書いて出版してしまうという試みが面白いです。
現段階では教科書ではなく、同人誌扱いです。
この本、中身は中学生が読む教科書とは思えないほどレベルが高いです。
執筆者も「全国の中学で使ってほしいわけではなく、難関校が使ってくれればいい」と言っていました。
この本があれば、どんな難関高校の問題も解けるという一冊になっているそうです。
それで実際に読んでいるのですが、その感想は「すごい」の一言。
執筆している竹田恒泰さんもすごいのですが、それを指摘する教科書審議会もすごいのです。
あるキーワードにマークがしてあり「生徒が誤解するおそれのある表現である」という指摘がされています。
例えば、メソポタミア文明の説明として
紀元前十八世紀にメソポタミアを統一しハンムラビ王は「ハンムラビ法典」を制定しました。また、月の満ち欠けから太陰暦を発明して一週間を七日とする制度を生み出し、時間に用いる六十進法もこのときに発明されました。
という文があります。
この文の「ハンブラビ王」から「一週間を七日とする制度を生み出し」まで赤線が引いてあります。
そして「生徒が誤解するおそれのある表現である(ハンムラビ王が太陰暦を発明し1週7日制を生み出したかのように誤読する。)」と書いてあるのです。
言われてみれば確かにそう読んでしまいそうですね。
「太陰暦や1週7日制はメソポタミア文明で生まれた」という知識を持った大人が読むと、勝手に「メソポタミア文明では月の満ち欠けから太陰暦を発明して一週間を七日とする制度を生み出され」といった感じで読んでしまいます。
ハンムラビ王が生み出したというふうには考えないかもしれません。
でも、そういった知識のない生徒が読むと、その文字面通りに受け取ってしまいます。
このように、一度自分の持っている知識をないものとして文章を読まないと精査できません。
逆に言えば教科書審議会の人たちはそうやって文章を読んでいるのでしょう。
教科書審議会のツッコミも勉強になるなぁと思って読んでいます。
頭のいい人が文章を書き、別の頭のいい人がそれをチェックする。
教科書作りの高みが見えた気がしました。
とてもじゃないけれど、私は教科書を作れる気がしません。
圧倒的な知識不足を実感しました。
将来、この本が教科書として採用されたら、この本で学んだ生徒達が社会に出てくるのです。
頼もしいような末恐ろしいような。
大人も負けてられませんね。
まずはこの本を読破したいと思います。