新スポーツを考えるKYな会話
K:今日は何かを生み出すことをしたいと思います。
Y:何するの?
K:無から有を生み出す作業。今までにないものを考える。
Y:どんなジャンルで?
K:なんでもいいよ。
Y:それが一番困る。
K:じゃ、テーマはスポーツにしよう。新しいスポーツを考えてみて。
Y:うーん。今までにないってのは、難しいな。
K:だよね。だから、今までにあるものを少し変えたり、組み合わせたりすると、新しいものが生まれるよ。
Y:そしたら「無から」じゃないじゃん。
K:いいのいいの。本当に無から生み出すってのは簡単に出来るものじゃないし。とにかく新しいものを生み出せればいい。
Y:それでも難しいな。
K:例えば、サッカーとバスケットを組み合わせて、「サッカーのゴールがあって、ほぼサッカーのルールだけど、足じゃなくて手でボールを扱うスポーツ。」どう?新鮮じゃない?
Y:ハンドボールという競技が既にあるね。
K:じゃあ、それをプールの中でやるとか。
Y:水球だね。
K:テニスとバレーを足して二で割ったスポーツ。
Y:バドミントン?
K:むう。既にいろんなスポーツがあって、新しいのを生み出すのは難しいな。
Y:ほらね。
K:まずは、ボールを使うか、使わないかで決めよう。
Y:使った方が面白いよ。
K:ボールの形はやっぱり球でいいよね?
Y:うん。ラグビーボールみたいなのだと扱いにくいし。
K:ボールは相手に当てるか、ゴールに入れるかしかない?放り投げても意味ないし。
Y:放り投げたら、距離を競うものが出来そうだけど、当てたほうが面白いね。
K:じゃ、あんまり固くないボールがいいね。
Y:ボールは取れるくらいのスピードで投げるのがいい。取ったり取られたりの方が面白いから。
K:ある程度範囲を決めないと、逃げ回ってばっかりで追いかけっこになっちゃうから、コートが必要だね。
Y:これって、ドッヂボールじゃない?ドッヂ弾平の。小学生がやるやつ。
K:言われてみればそうだね。ドッヂボールはこうやって出来たのか。
Y:全然新しいものじゃないね。
K:じゃあ、いろんなスポーツを言葉で表してみて、それらを組み合わせればいいんじゃない?
Y:やってみて。
K:サッカー「無駄に広いコートを縦横無尽に走りまくって、一つのボールを総勢22人で奪い合う。人類の武器である手を使わないという非常にストレスの溜まるルール。奪ったボールをゴールに向かってシュートし、それがゴールネットを突き破れば得点となる。」
Y:ゴールネット突き破れるのはキャプテン翼くらいしかいないよ。
K:バスケット「3.05mという中途半端な高さにあるゴールリングに、顔くらいの大きさのボールを通すという、球入れの大人バージョン。体育館の中で、汗だくの大男に触れて球入れを阻止する。」
Y:悪意のある言い方だね。バスケに恨みでもあるの?
K:卓球「大の大人が、重さ2.5gのピンポン球に翻弄されるスポーツ。テニスをしたいが、広い庭も道具もないと嘆いた人が、家の中でそれを再現。ちゃぶ台を使い、手にはスリッパを持って球を弾いたのが発祥。」
Y:スポーツを作るんじゃなくて、発祥の新説を作っちゃってるじゃん。
K:剣道「戦国時代さながらの汗臭い防具を身にまとい、奇声を発しながら相手に切りかかる。相手をぶった切るイッポンを取れば勝ち。実戦なら、イッポンを取られた時点で命がなくなるはずだが、このスポーツは蘇生ルールに基づき、三本勝負で行われる。ちなみに手に持っているのは刀ではなく、木の枝である。」
Y:竹刀だよ。
K:アメリカンフットボール「サッカーくらいの広さのコートの中を、たくさんの大男達が走り回る。ボールは楕円形で奇妙なバウンドをし、時に男の腕に抱きしめられながら、ゴールへと届けられる。数秒ごとに吹かれる審判の笛によってプレーは中断され、ルールを知らない人は観ていてストレスが溜まる。」
Y:観てる人の感想なんかどうでもいいよ。
K:ゴルフ「下に置いてある卵くらいの大きさのボールを、殺人道具になり得るゴルフクラブで思い切り叩いて飛ばし、数百メートル先にある穴に入れる。メートルになれた日本人にとって、ヤードは使いにくいが、ゴルフかぶれはそれを好む。素人にとっては、ボールを思いも寄らぬ方向に飛ばし、それを探すという、ボール探しゲームである。」
Y:あれ、止まってても最初は当たんないんだよね。
K:ビーチバレー「砂浜で行うバレーボール。ビキニ姿を堂々と鑑賞するための、おじさん達に優しいスポーツ。」
Y:おじさん達のためのスポーツじゃないよ。
K:マラソン「車が走る時代に逆らい、自分の足で42.195kmもの距離をただひたすら走るというM的スポーツ。」
Y:自分でやってみるといいよ。結構楽しいよ。
K:スポーツをいろいろ言ってみました。これらから良いとこどりをしたら、凄いスポーツが出来るはず。
Y:やってみて。
K:「無駄に広いコートの中で汗臭い防具を身にまとって奇声を発しながら42.195km走り、落ちている2.5gのボールを足を使って3.05mの高さにあるリングに入れようとする選手を、木の枝でぶった切り邪魔をする。ちょこちょこ鳴る笛にプレーは中断され、観客にストレスが溜まったあたりで、防具を脱ぎビキニ姿になる。最後はボールを観客席に殺人道具のゴルフクラブで打ちいれ、それを探しに行くというわけのわからないスポーツ。」
Y:自分で「わけのわからないスポーツ」って言っちゃったね。
K:うん。新しいのを生み出すのって難しいわ。
Y:既存のスポーツで我慢するか。
K:そうしよう。でもスポーツすると疲れるから、明日スーファミのサッカーで勝負しよう。
Y:オーケー。
K:じゃ、またね。
Y:ばいばい。