ある社会の用語を説明するための物語。
先に言っておきますが、フィクションですよ!
ある用語を理解するための完全な作り話です。
私は数人の部下を引き連れて、ある島の小さな村にやってきた。
ここは航海の中継所として使える便利な場所だ。
この島を都合よく使うためにも、ボスは私のような人間をこの島に配置しておきたいんだろう。
文明の未熟なこの島で暮らすより、母国にで暮らしたほうが快適だが、ボスの命令には逆らえない。
それにしても、この島の人間は野蛮だ。
いまだに腕力がものを言うようだ。
この野蛮人達には、ちゃんと話が通じるのだろうか。
この島に暮らして数日、事件が起こった。
野蛮人の村長が烈火のごとく怒っている。
私の部下の1人が、野蛮人の女性にハグをしたという。
……野蛮人の村長は一体何を怒っているんだ?
ハグなんてただの挨拶だろう?
うわ、なんかヒートアップしてきた。
部下をはりつけにしている。
村民たちがその周囲を取り囲んでいる。
ん?
なんか村長が言っているぞ。
「この村の女性に抱きついたものは首を切る刑に処す」
正気か?
ただの挨拶なのに。
私はそんなのはおかしいと主張した。
そしたら、村長、「これがここの法律だ」なんて言いやがる。
こんな野蛮人どもの法律なんて、あてになるものか。
私は、村長にこう言ってやった。
「我々は外国人だ。この村の法律を知らない。
この村では悪いことなのかもしれないが、
我々の国では何の問題もないただの挨拶だ。
それでこんな騒ぎになるなんて、
お前ら野蛮人の法律なんかに従うことなんてできない。
我々外国人は、母国の法律で裁かせてもらう。」
どうだ。
格の違いがわかったか。
腕力がものを言うなんて100年遅れてるんだ、この村は。
我々の国に比べたら、この村は赤ん坊だ。
赤ん坊が考えた法律なんぞに付き合ってられるか。
「治外法権を認めろ」と言ってやったんだ。
……ん?
村長も村民もぽかんと口を開けている。
治外法権の意味がわからなかったか。
「我々外国人が罪を犯した場合、この村の法律ではなく、
我々の国の法律で裁いてもらう。
我々の国の法律(この村から見ると『外』国の『法』律)で事態を『治』める『権』利だ。
治外法権を認めろ。いいな?」
村長は素直に受け入れてくれた。
これで我々はこの野蛮人達に、野蛮人たちの法律で裁かれなくて済む。
「この村で罪を犯したなら、この村の法律で裁かれろ」と
野蛮人達が騒いでいる。
不平等だと訴えているようだが、知ったこっちゃない。
野蛮人達の文明が発達して、我々並みになったならともかく、
現段階でその声に耳を貸す必要はない。
とりあえずこれで私と部下たちの生活は守られた。
よく村長がすんなり受け入れてくれたな、だって?
そりゃ、頭にピストルを突きつけて要求したからな。
ー 完 ー
上の物語、完全にフィクションですよ?(笑)
深夜のテンションで書きました(笑)
でも、ハリスと大老の井伊直弼が1858年に結んだ日米修好通商条約に「治外法権を認める」というのがどういうことか、わかったんじゃないかな。
ちなみに「領事裁判権を認める」という用語も出てきますが、中身は同じようなものです。
先程の野蛮人村長にまた出てきてもらいましょう。
野蛮人村長が「わかった。治外法権とやらは認めてやる」と言った。
私はピストルを下ろした。
「でも、どうやってお前ら外国人を裁くんだ?」
「…お前ら?」
私は再びピストルを村長に向けた。
「あっ、あなた達です。
万が一、あなた達の誰かが罪を犯した時、一体誰が裁くのですか?
私はこの村の法律は知っていますけれど、あなた方の国の法律はわかりません」
「心配するな。それは領事であるこの私が裁判権を持ち、
罪を犯した同胞(お前らにとっては外国人)を裁いてやる。
それでいいな?」
「…………はい」
というのが領事裁判権。
こんな物語が頭に入っていれば、理解が深まるんじゃないでしょうか。
本当のところが気になる人は、ちゃんと自分で調べてみてくださいね!
夏休みの自由研究とかにいいかもね。理科じゃないけど。
当時、日本は格下のこども扱いされてたってことがわかったでしょうか。
不平等条約だ!って日本人は騒いでいたけれど、相手の立場に立ってみれば、まぁそれも仕方ないよな〜って思いますよね。
結局、この条約は1894年の日清戦争の直前に改正されることとなります。
不平等条約と言われるもう一つの「関税自主権」についてはまた別の記事で書きます。
お楽しみに!